国鉄、JRの電気機関車、ATS関連のディテールについての考証
 
当店の国鉄新性能電気機関車シリーズもEF66から始まりEF65,EF64,EF60そして近日発売予定のEF81とゆっくりと進行してまいりました。この間にメーカーのATM社とのやり取りの中でそれまでは出来なかった事、無理なことを少しずつクリアーして来ました。最終仕上げの品質向上は勿論ですが、各部分についてはそれが言われて初めてわかるような個所もあれば、目で見て分かってもその意味が何なのか理解できない部分もあると思います。当店のモットー「神は細部に宿る」の通り模型は細部の集合体であるとの考えからメーカーサイドの今の技術、管理能力を常に実現可能、不可能のギリギリのところの高さで要求、話し合いを重ね進化を重ねてきました。メーカーの技量を見極める事と私達の研究心、感性でメーカーには常に100パーセントの力を発揮してもらって来ました。唯メーカーも生身の人間です。全て手仕事です。今はもう本当に限界で仕事をしてもらっている状況です。
 EF64を制作している過程での事です。EF65同様に全ての軸に空転検知用のコードを付けた状態で制作していましたが写真で確認し文献をよく読んで調べてみると後期型ではモーターに流れる電流の波形から空転を感知する方式に改められたことで軸箱の空転検知発電機とそのコードが消えて無くなっています。知ってしまったからには作り直さないと気が済まないのが商売人としてはまずいところのムサシノモデルで50万だか60万円経費をかけEF64後期型の台車の軸箱を正確な形状の部品と交換しました。ただJR東の37,38号機のP、Psアンテナ用の発電機の追加、タコグラフメーターの機械式から電気式への変更はその前に相談の上クリアーしていたのですが・・・・。ただこんなことはムサシノモデルでは日常茶飯事。
 今度はEF65を制作している過程で台車に付くタコグラフメーターの有り無し、機械式、電気式の作り分けが可能かどうか問題になりました。前のEF64の場合もそうですがロストワックス製の台車の軸箱を作り分けるのはそれまでの常識から逸脱するような要件です。ダイキャスト製の台車が多く使われて来たのでそれまではそのような作り分けは考えようも無かったのです。EF64の時は大変でしたがATMではプロトタイプがそうなので再現するのは当然のことと、ここで模型製作のステップが一段上がる事になります。しかしこれは部品の管理が想像以上に大変になり当然EF65でもP,Psアンテナ用発電機の問題が加わってきます。
 
 そしてEF81です。EF81では国鉄時代台車公式側第4軸に1~5次車(1~136)では機械式の,6次車(137~152)には電気式のタコグラフメーターが付き、非公式側第5軸にスピードメーターが付いています。これが基本形です。JR東では1991年から東京を中心とした首都圏用にATS-Pを導入、それ以外の線区ではATS-Snを使用することになります。田端区のEF81のディテールの変化としてカプラー胴受けの下の部分に1エンド、2エンド共レール中心上にATS-P用の車上子が付きます。そして台車非公式側第3軸にATS-P用の電気式発電機(正確には比較回路用検出装置と云う)が取り付けられている。表記は国鉄時代のSからP,Snに変わります。2001年よりATS-Snを発展させたATS-Psが導入されそれ用の車軸発電機が公式側第4軸に取り付けられ、元々ここにあったタコグラフメーターは公式側第2軸に移動している。その結果鳥海牽引機や北斗星色やレインボー、赤2号も含め少なくとも2001年以前のつまりグレーHゴム時代とそれ以降の黒Hゴム時代ではATS-Psのディテールの追加と表記を変えなくてはなりません。表記はP,Psになります。ところが例えば長岡区のEF81 150号機では首都圏乗り入れ用のATS-Pを装備していません。この場合タコグラフメーターは公式側第4軸のまま変わらず非公式側第3次軸にATS-Ps用の発電機が取り付けられています。表記はPsのみです。同じ長岡区の127号機赤2号、黒スカート、グレーHゴムでは表記はSnでタコグラフメーターが機械式から電気式に交換されたのみです。考証も大変でしたがこれを模型で正確に再現しようとするとそれこそひっちゃかめっちゃかになりかねません。ところがJR西のEF81がまた東とは異なります。スピードメーターが非公式側第5軸から公式側第4軸に移り公式側第2軸と非公式側第5軸に電気式発電機が取り付けられています。不勉強故にどちらがタコグラフメーターでどちらがATS-P発電機かは不明です。ところがこれも少し早く無くなった45,48号機はともかく101や106,7,8号機、トワイライト色ではJR東の線区を走行するのでATS-Psを装備することになり非公式側第3軸に発電機が取り付けられます。そしてこの上にあった手歯止めが保温箱の横に移動しています。もうため息が出て来ます。ATM側では更に軸箱に取り付けられた発電機からのコードを受けるコネクター部品を床下側に付けるので更に大変です。

JR東日本 田端区 ATSーP、ATS-Psを装備したEF81。公式側第2軸に取り付けられているのは電気式タコグラフメーター。
第4軸に取り付けられているのはATS-Ps用発電機。元々第4軸にあったタコグラフメーターは第2軸に移されています。
 
非公式側第5軸にはスピードメーターが取り付けられている。

非公式側第3軸にATS-P用発電機が取り付けられている。

今回のEF81ではPS22Bパンタグラフのインシュレーターの有り無し、酒田機関区時代に取り付けられた安全柵取り付け用のブラケット、各号機の手歯止めの位置の相違、JR西所属機の運転室室内のエアコンパーツの取り付け等など徹底して正確なEF81のモデルを目指してメーカー共々制作に打ち込んでおります。正確=美しさ、です。