ムサシノモデル製品はご存じの通り韓国で製造しています。専属で製品を生み出してもらっているATM社をはじめRealtec社、Art Hobbiesと世界最高水準の真鍮製の鉄道模型メーカーです。当店とは30年以上の長きにわたり共に仕事をしてきました。その間日本のモデラーが見て日本型の模型として如何に違和感が無いように表現していくか腐心してまいりました。日本メーカー製品と並べても違和感のないように。これはディテール云々以上に難しい問題でメーカーとのコミュニケーションを重ねて解決していきました。30年前の当時、韓国の2大真鍮製モデルメーカーであったサムホンサとアジン。日本型の模型に限っての事ですが、例えば馬に例えると(私は乗馬はしませんがあくまでも例えとして)私見によればサムホンサは騎手が指図しなくても適性スピードで安全に目的地まで連れて行って貰える感じ。しかし往々にしてそつなくまとまり過ぎあまり面白味のない模型となります。アジンはと云うと荒くれ馬でスピードも早く力ずくでもコントロールしていかないと振り落とされてしまいます。その代わりうまく制御できるとこれがとんでもなく魅力的な製品が出来上がります。サムホンサは初めからそこそこの出来の製品を作ってきますが、アジンの場合こちらが望むレベルにもっていくまで我慢と忍耐と時間が必要でした。もう一つ違いとしてサムホンサは日本型としては塗装に艶が無い、エッチングの彫りが浅いという問題が有りました。これは同社がヨーロッパ型製品やアメリカ型でも蒸気機関車製品が得意としていたことによります。顧客の白人が碧眼であることによるのではと考えます。あんなにピッカピッカの氷河急行が模型になると艶が無いですねー、という事です。得意のアメリカ型の蒸気機関車モデルではこの艶具合が丁度良い感じになります。エッチングの彫りは1/87のまんま1/80に適用していた様です。ヨーロッパ型モデルでも艶消し具合、エッチングの彫りの浅さが行き過ぎた製品が多々ありました。日本型では立体感、重量感が著しくそがれます。私は2次元モデルと呼びました。勿論模型製品は3次元モデルですね。またサムホンサではこちらの要求もあまり受け入れて貰えなかったようです。一方アジン社です。ここはアメリカ型ディーゼル機関車が得意で塗装の艶具合は程よい感じでしたがまだ試行錯誤的なところが有りました。でも趙 南 達 社長 の好奇心、チャレンジ精神が旺盛で私の意見にも真摯に対応して貰えました。しかし名にし負う荒馬ですから最初はいろいろな問題が有り私も振り落とされない様に休みなし、毎日徹夜で最初の数年間を乗り切っていきましたがある時から劇的に品質が向上していきました。メーカーのスタッフ共々との最初の数年間の苦闘が無駄になりませんでした。結局その中心メンバーが今のATM社を形作っています。ムサシノモデル製品が程よい立体感と塗装の艶具合、ひいては微妙なニュアンスまで表現出来るまで20年以上の年月を要しています。そして気が付けば同業者は次々と脱落して消えていき1/80,HOゲージ,16番で機関車の模型を作っているのは数社のみとなっています。
当店では製品に微妙なニュアンスを与えるため窓の表現には特に神経を使ってきました。例えばボンネット型ディーゼル機関車の精細な運転室窓の大きさ、繊細なサッシの段差表現等はDD16に始まり,DD13からDD51まで初めてまともに再現されたものです。またかなり以前からなるべく窓ガラスははめ込み窓を採用してきました。アジン時代はプラ製の成型品、ATM社になってからはアクリル切削加工の窓ガラスを採用しています。これコストが掛かるんです。でも品質には代えられません。それは透明プラ板の方がコスト的には60分の1程で済んでしまいます。ところが韓国でも日本同様に小さな町工場が次々と消えて無くなった行きます。アクリル切削加工業者も同様でとうとうATM社のオーダーを受けてくれる業者がなくなってしまいました。さあ困った、という事になりATM社では日本で作れないかと無理難題を言ってきました。ここで大きな助け舟として藤沢のモデル倶楽部様にてオーダーを受けて貰えることになりました。めでたしめでたしですが韓国の製作現場の危機感たるや相当のものになりつつあります。モデル倶楽部様にも長~くがんばってもらいたいですね。

