制作裏話

第9話 OJ C56 遁走曲

 ひょうたんから駒と云う言葉が有りますがさしずめOJ C56はこれに当たるのではないかと思われます。以前も書いたようにアメリカ型Oゲージを見てC56が頭に思い浮かんだのは確かだったのですが16番、HOn3 1/2ならともかく敵はOJです。ムサシノモデル初めての国鉄制式蒸気機関車モデルがOJのC56ですから普通じゃあないです。C62の2号機だぁーと商売的には売れ線を並べ立てるのなら正攻法というものですが。今から30年程前本格的なイコライザーシステムを組み込んだ世界で初めての量産品モデルOn3 D&RGW K-27(PFM社)の生産に携わっておりC56、C12、B6と云うラインナップはそのルーツにK-27の影響が有るのではとの思いもあります。8100の北海道での晩年炭鉱鉄道での活躍の姿などもOJで再現出来たら本望なのかもしれません。最近もありましたがHOn3 1/2、 12mmファンがやって来てしたり顔で、やれ狭軌感がどうのこうの、ファインスケールがどうのこうの、俺は偉いのだと云わんばかりにのたまわれても鼻白んでしまうのです。まずOJに歩を進めたのもそのような事も関係あるのかもしれません(最もDD51、DF50のHOn3 1/2 12mmゲージでの製品化は亜進精工社との間で合意済です)。
 今回C56を企画制作してみてOJモデルの難しさをつくづく感じています。アートホビー社のデザイナーはC56の図面製作に4ヶ月を要しております。そして例えばC56では450点ものロストワックスの原型を最高品質で(つまり原型代が非常に高い)製作しました。単純に1個1万円計算でも450万円です。又初めの予想と比べても製作日数で恐らく4ヶ月~5ヶ月は余計に時間を費やしています。メーカーのアートホビー社が利益を出しているとはちょっと信じ難いところです。日本でC56を同レベルで製作したとすると80万以上になります。つまり倍の価格なのです。メーカーも利益が出なければご飯が食べられない訳で私共がこれからの企画を実現する事は不可能になります。この為、当店としてはメーカーの存続とお客様にいかに良質で安価な製品を提供していくかという大変難しい舵取りをして行かなければなりません。16番でも同様、EF66、DF50、EF53とC56とまったく同じ状況にあります。将来的には真鍮モデルメーカーは消えてなくなる運命にある訳ですが、それまでにより良い真鍮製模型をどれだけ残して行けるのかとの思いにかられながら仕事を日々こなしている状況です。そして真鍮模型の新製品の発売がまったくなくなった時、インジェクション・モデルも発売が困難になるのは間違いないでしょう。真鍮モデルとインジェクション・モデルは車輪の両輪なのですから。

第8話 EF50 価格狂騒曲

EF50を当社で発売するに当たり巷では価格の事で色々な憶測があったとの話でした。「きっと価格は250、000円位になるのでは」とか「いや22~230,000円でおさまるのでは」とか。で¥186,000と決まって、この価格が安い訳では決してありませんがそれでも以外に感じた方も多かった様子でした(最も更に1ケ¥12,000のファウル・ハーベル・コアレスの使用を止めてキャノンEN22 ¥2,000にすれば¥176,000で行けたのですが)だもんで私共も今頃になってハタと気が付いたのであります。なぜ他メーカーさんがEDクラスの完成品を作りたがらないかが!結局のところEFクラスでもEDクラスでも掛かる手間があまり違わないのでした。モーターを除いたEF50の価格が約¥174,000.同じくED13が約¥136,000.EDクラスがどうしても割高感となる訳でしかも全体バランスなら何やら滅茶苦茶手間が掛かる割に儲かりまへん。一般の普通のお客様は「きっとEDクラスがあのチッコさで13万円台だからEFは超20万円とお考えになったと思えるのですが、実は!私共の方こそこのドツボにはまっていたのでありました。

第7話 ED56幻想曲

先年当店でも他社特製品を作ってしまったED56。実はED54の資料を探して合併前のSLM(スイス・ロコモティブ)に当たった時、同時にED56の素晴らしい資料も全て揃っております。車体、台車、屋上、キャブ内部等実に美しい完全な図面です。これに荒井文治氏による八王子で撮影された数多い写真、小寺康正氏によるED23の細部写真を合わせると完ぺきな模型に仕上げる事はいとも簡単な事です。例えば屋上ランボードは最初は片側にしか取付けられてなく高圧線側は後で取付られた、その為車体より少しはみ出し気味に巾の狭いランボードが取付られている事等、後の改造も手に取るように理解出来ます。

第6話 裏ばんえつ物語

先日当店のお客様と連れ立って2日間磐越西線でC57-180のばんえつ物語号の追っかけを楽しんで来ました。ちなみに彼のカメラは「写るんです」でした。汽車なんか走ってこなくても昼寝にはもってこいの新緑の季節の東北の田園風景。そんな中会津若松の扇形庫の中でC57の水の補給を許可を頂き見学中、同じ庫の中で昼寝をしていたDD14の方が気になってしょうが有りませんでした。ゴツクてヘビーでその凹凸感は見事。イヤー迫力が有ります、カッコえーなーと思わず見とれておりました。

第5話 ゴハチの話

最近益々当店に対するEF58(Fのゴハチ)の期待、リクエストが大きくなって来ているのが肌にビンビン感じられます。現在血相を変えて取り組んでいるEH500、DD51-1、ED13はおろかEF66、DD91、EF15、EF50、DF50と全てFのゴハチで駆使すべき技法の探求、或いは熟練に位置付けられます。Fのゴハチのモデルを今更作ると云う事は誠に大きなバクチを打つに等しい(私は賭け事は一切行いませんが模型作りは毎回大バクチ、中バクチ、小バクチの連続です)ものでハンか、チョウか、白か黒か玉か石か、名作か駄作か的判断をマーケットは間違いなく下します。ですから今後も予行演習がえんえんと続き、Fの57だ、Fの65だ71だと益々慎重!?になって行き兼ねません。皆様過度の期待などしてはいけません。

ゴハチ 健さん説
ゴハチの魅力って何だろう。同等の下廻りを持ちながらゾロゾロガタガタ低い重心のFの15と比べ楽々とした軽みを持った走行感、身のこなし。ゴハチの一番美しかった1950年代後半から60年代初期の頃。東京機関区に勢揃いしたゴハチの顔、顔、顔。真正面より撮られた表情の何と云う凛々しさよ!。オウ 江戸っ子だってねぇー、神田の生まれよ、寿司食いねぇ、粋だねぇ、いなせだねぇ とそのキップの良さは二昔も前の健さんみたいなもの。晩年のゴハチは数々の改造を加えられ、また寄る年並には勝てず往年の美しさを失って行きましたが、その最も美しかった日々の姿がオーヴァーラップされてこないと失格。森を見ずして・・・・・的にゴテゴテグロテスク、ディテールしか目に入らない模型になり兼ねない。アーコワ、かくして修業の日々は続くのでした。

第4話 スニ40, スニ41, マニ44, スユ44

やり過ぎず程々のレベルをねらっての模型化を目論んでおりますがコレが難しいんです.....
キット組立品に毛が生えた位の物では既に時代遅れだし。 フレームは作り込んでパイピングは程々。 妻面連結器廻りのディテールはしっかり作り込んで、車体側面の錠やラッチ等は繊細に表現。 開閉するのは中央2枚ドアだけ。
スニ41, マニ44の室内も程々。 ボタン型バッテリーを組込んでON-OFFスイッチで室内灯を点灯させるのも良いですね。

第3話 DD93

伝説的機関車DF93.....

これは屋上モニターの微妙な形状が解らずに煮詰まっていました。 他はほぼOK。 屋上の手掛かりとなる写真Wanted!!。有る訳ないよなーと半ば諦めDF93模型化も没かーと、その時またまた神のお告げのH様のお言葉。 「1962年の夏。 電化工事終了、でもまだC59, C62天下の山陽線下松駅で、停車中の20系はやぶさの車掌室窓より、半年前千葉で見たDF93が、何でこんなところに居るのと1枚パチリ。 その時のネガが家探しの末にやっと出て来ましたよ。 屋上も良く解りますよ。」
 そして現在2002年春発売を目指して、GOD図面に着手したところであります。 神様、仏様、H様大変有難うございました。

本当の裏話
でもDD91, ED13, DF93と頭に血が昇ってんの当人達だけだと後がオッソロシー!………続く。

第2話 ED13

GOD図面の着手が1999年10月の事.....

第一稿改訂の上、第二稿よりサンプル・モデルを親和さんが製作。 これが全然気にいらず第三稿が脱稿されて来たのが昨年12月。 この間メーカーのチーフ・デザイナー ミスター金とケンケン・ガクガク色々有りました。
さて、第三稿GOD図面のCheck開始直前に仙台の方より、仙山線時代のED17-27号機を、真横より写した後光が差すようなお写真を拝借する事ができました。 イャー凄い!凄い。
残されているED13の写真を穴の空くほど観察、考証、どうしても解明できなかった多くの疑問が完全に氷解して行きました。
仙台の皆様には本当に心よりの感謝の気持ちでいっぱいです。 これらの資料を基に一から図面のCheckを行い、10日程かけて完了(これは私の弟の労作)。 現在最終(とならないと大変困る)稿、決定稿のGODを作図中、4月後半には発売出来る予定です。
空前絶後のED13のモデルですから、私達にかかるプレッシャーは並外れて大きなものです。

第1話 DD91

GOD図面も完成、現在量産品の土台となるハンドメイド・サンプルを製作中です。
このGOD図面製作中の事.....
 車体側面と下廻りの各部寸法の整合性が取れず七転八倒しておりましたが、このDD91と云う機関車、DD54の試作機として1軸中間台車を持つことで有名なおカマ。 DD54同様センターに1軸中間台車があると素朴に考えていたのが間違いのもと。
掻き集めた資料のひとつの寸法を見て一見落着。 なんと中間台車がオフセットして取付けられているではありませんか。
この他前面の微妙な表情、深く尖った独特の車体断面や深―い前面のR。 ランニングボード足のそれぞれのピッチの違いに至るまでもー必死の末、GOD図面がメデタク完成したのでした。