模型製品の図面作り

今アメリカでは日本以上に真鍮模型に代わりDCCを組み込んだ音の出るプラやダイオキャストの製品が花盛りです。まあ電化製品いってよいかもしれません。これらは大体以前の真鍮モデルの図面を流用したものがかなり含まれます。まだはしりの頃、あるメーカーがペンシルバニア鉄道でK4sと並ぶ代表的な形式M-1a 4-8-2を発売しました。勿論DCC搭載で音も出ます。PRRのM1aと云えばアメリカのブラスモデルインポーター、チャレンジャーインポーツが韓国のサムホンサに作らせたものがプロポーションの正確な印象把握、ディテール、走行性能でほとんど決定版と呼べる存在です。私も大好きなプロトタイプのモデルの一つです。ところでM1aの模型製品にはもう1つ1960年代にカツミさんがアメリカのGEMと云うインポーターに船積みした製品が存在します。この製品はディテールでは当然今の製品にはかないませんがプロトタイプの特徴を捉え、ボイラーバンド手巻き、磨き上げ仕上げなど手作り感満載の骨董的価値を見出すことが出来る製品です(残念ながらその様な価値観を持ち合わせ理解出来る人はほぼ絶滅してしまいましたが)。当然1990年代後半の技術的にアメリカ型真鍮模型製作のピーク時に製作されたチャレンジャーインポーツの製品とは全く異なる設計による模型であることは一目瞭然です。ところがさきのあるメーカーの製品、どこでどう間違えたか明らかに1960年代の古いカツミさんのモデルをモデルとしたデッドコピーモデルでした。中身は最新、でも外観は1960年代モデルという不思議な製品です。要するにこれは図面を流用、参考にしたのではなく安直にスキャンして作ったものです。日本でも同じことが有りましたが。まあ、DCC搭載と云うことで外観はどうでもよかったのでしょう。その後のA社のビックボーイはキーインポーツ/サムホンサがミスをしたエッチングパターンそのままで製品化。W社のカリフォルニアゼファーもチャレンジャーインポーツ製品と同じ個所をミスっています。最近の製品もほとんど真鍮模型のコピーと云って差し支えないです。
アートホビーが数年前にKey model向けに製作したOスケールSPキャブフォワードのシリーズが有ります。それはサムホンサがアメリカ、プレシジョンスケール向けに製作したサムホンサのアメリカ型最後のOスケールモデルの設計図面を買って手に入れその元図を2年以上の時間をかけて徹底的にリファイン、そして製作したものです。アートホビーはその図面をブーリムに売ったそうでいずれHOの模型がDivision pointから発売されるかもしれません。この様に韓国では過去の製品の図面を何らかのルートで入手出来るようです。
鉄道模型製品にインポーターやプロデューサーの違い、メーカーや図面を担当する人間の個性が出るのは当たり前の事です。昔は実物の本物の図面から模型化図面を作図するなどと云うことは全く有りませんでした。凸凹の畳の上を道床付き線路で走らせて遊ぶことが重要でもっとおおらかで緩い時代ですから個性豊かな製品がいっぱいありました。結果的にそうなっちゃったと云うかそうせざるしかなかったのであって時代故深く考えてそうした訳ではありません。でも夢おおき良い時代でしたよ。
 

 





































当店の製品作りはプロトタイプの選定が決まりましたら実物の図面の収集からはじまります。鋼体図面、部品図まで含めての事ですが古いものでは戦災等で失われたものや、今ではコンプライアンスが厳しく車輌メーカーに頼んで等は到底不可能です。例えばED13,DD54 1次車,DD91は基本寸法が入った図面と写真から時間をかけて作図したものです。ED13は側面のドア、ベンチレータや帯、窓の位置等真横の写真が無く位置決めが全く出来ませんでした。たまたま仙台のお客様のお知り合いの方が仙山線においてED13(ED17 28号機)を真横から撮影されていて、そのお写真を拝借させていただくことで正確な位置を割り出すことが出来ました。又もう一つ大事な大屋根、小屋根のRについては何通りかの正面図を作り弟とメーカーの設計者と3人で大激論を戦わせ数値を決めた記憶が有ります。DD91はフィルム36枚1本分の細部写真を提供していただいたのが幸い、全体のプロポーション、屋上ディテール、床下機器や台車をこれ以上は無理と云うまで最善を尽くした図面を作ることが出来、正確なモデルを再現することが出来ました。先年亡くなられたAJINの趙社長と協力して作図したものです。。最近ではED19の取材を最初私達だけで、更に新たにメーカーのReal Teck社、社長に日本に来てもらい箕輪町の保存機の採寸を2日間、計4日徹底的に行いました。
明細図面が有っても実物の取材の許可が下りれば屋上、床下と徹底した取材を行います。要するに模型は適当にやってパッと出来るものでは有りません。アートホビーで今も貨車の製品を作ってもらっていますがあれは全て国鉄の明細図面集から製品化するための模型化図面を描いています。ATM社のEF81もEF64,65もEH200,EF510も全てその様にして作図の上で製作しています。OJのC62は作図とプロデュースに5年かかりました。アートホビーでは図面の制作に日本円で約1000万円掛かったそうです。我々のプロデュースも並大抵の事では有りませんでした。アートホビーにはC62の事で京都、大阪に2回取材で来てもらっていますが費用は全てこちら持ちです。その打ち合わせで何十回もアートホビーの会社を訪問しています。他社ではカツミさんのキットを持ち込み京都に一度も行かずに短期間で作っちゃった価格的にほとんど変わらないC62の製品も有りましたがプロデュースと設計にかけた時間は百分の一にも満たないでしょう。まあその違いが理解できない人がいるのも現実です。