特集1 車輪の形状 フィリットについて
更新日 平成13年12月7日

 一般に蒸気機関車を発明したのはG・スティーブンソン(George Stephenson)とされているが、彼の制作したロケット号が成功した要因の一つがフランジ付き車輪の採用にある。曲線の通過に対応するためタイヤ面に傾斜を附けた形状は、以後の鉄道車輪の標準となった。もっとも軌間の4フィート8インチ1/2というのは、当時の馬車の車軸の寸法からきているらしい。模型においても当然ながら実物に準じだ形状になっているが、HO・16番ゲージにおいてはアメリカのNMRA(National Model Railroad Association)が研究開発したRP25が標準となっている。もう40年近くにもなるものだが、当時はその通りに作るのは難しいとされていた工作もNC工作機の普及によって容易になり、最近のほとんどの製品に使われている。ただ日本ではアメリカへの輸出が非常に減ってきているのと国内だけの新しいメーカーが増えているためか、忘れられかけている傾向がある。もっとも40年前ならともかくとして今なら車輪の厚みやフランジの高さなどがもう少しファインであっても良いと思われる。
現在
ムサシノモデルで採用している16番用車輪図1の形状である。RP25を元にして厚さやフランジの高さなどを少しファインにしてある。特徴はフランジに直線部分がほとんどなく、先端が尖り気味になっていることである。寸法は車輪の厚さ2.4〜2.6mm、フランジ高さ0.7mm、チェックゲージは15.25mm、バッグゲージ14.6mmとなっている。さて表題のフィリット(Fillet)であるが、フランジから踏面にかかるR1がそれである。少し大きめのR(0.3mm)になっているがそれが重要でフランジがレールに接するのを防ぐことにより常に車輪とレールは一点で触れ合うことになり、走行抵抗が少なくなる。また線路内での車輪の偏りがなくなるので、蛇行もしなくなる。さらにレールの継ぎ目などで左右に多少のズレがあっても脱線しない。これはポイントでの走行を考えてみれば大変重要なことで、最も脱線しやすいポイント部分やフログ部分をスムーズに通過できることになる。フィリットのRの大きさが、走行性に大きく関わっているのが理解されると思う。

最近のRMモデル誌上で1/80・13mmゲージの車輪の規格についての記事を目にされた方は多いと思う。ムサシノモデルでは次期製品において、少量ながら13mm化したものも作ることになった。
そのための車輪が
図2である。16番用を元に13mmらしくよりファインにしてあるが、走行性も配慮してある。13mm用の線路としては今のところシノハラの製品しかないので、その6番ポイントとフレキシブル・レールで作られた線路をスムーズに走行させるには図に示した車輪の厚みやフランジの高さは必要であると考える。車輪の規格はそれで単独で成り立つものではない。RP25もNMRAの線路の規格であるRP12などに対応したもので、ムサシノモデルの規格も現在普及していると考えられるシノハラ、PECO、カトーの線路の走行を考慮したものになっている。昔フレキシブルレールを16.5mmでなく16mmで作ってしまったメーカーがあったようだが、線路も規格に合ったものでなければスムーズな走行は望めない。そのため次回は線路の規格とNMRAスタンダードゲージについて掲載する予定です。