特集9 模型製品のウレタンモルト、スポンジの劣化の悩み

最近何人かのお客様の話で,[当店の模型をそのまま元箱に入れたままにして置くと必ず中の緩衝材としてのウレタンモルトが劣化し悪さをするので小さな別の収納箱を買ってきて入れ替えている]というもの。ただこの箱が如何にも衝撃に弱そうで中身は大丈夫かいと逆に心配になります。昔はカワイさんや鉄道模型社、つぼみ堂、カツミさん等皆ウレタンモルトではなく最近はトンと見かけなくなった半透明ちりめん状の紙の様なものが緩衝材として使われていました。ただこれだと衝撃に弱いところが有りウレタンモルトが使用されるようになりました。ただこのウレタンモルト、紫外線や湿気により劣化するということで大切なコレクションを箱に入れたままで中の模型を良く包装していないと劣化したモルトで塗装が台無しになってしまったとか、入手後何年か後にモルトの劣化で例え他の部材に変えたとしても当初の箱を開けた時の感激は失われてしまいます。何時までも買った時のフレッシュな状態でおきたいのは人情です。模型を買うという行為にはその時々の各人の思い出が付いて廻るものですから大切にしたいです。 写真のサンゴさんの7800形、31系客車もトビーさんの4030形ももう50年近く昔の製品ですがモルトは経年で色褪せしてるとは云え劣化はしていません。材質は気泡のきめ細かく手触りが柔らかいものです。同じメーカーの製品でも気泡が大きくざらりとした質感のモルトは確実に劣化してしまいます。それは誰でも簡単に判断のできることです。アメリカ型真鍮モデル輸出メーカーのアトラス工業がUNITYEDブランドでPFM社へ1960年代中頃に輸出した製品等も中のモルトは全く問題有りません。ムサシノモデルが日本国内で生産したキット類ではセピア色の車両たちのシリーズは柔らかい方のモルトを使用していたので30年以上経った今も全く変化がありませんがそれ以外の製品は硬い方のモルトを使用したためほぼ壊滅状態です。以前から石炭由来の原料のものは大丈夫、石油系はダメだとの話は知っていてお客様にも説明していましたが残念ながらさしたる確証は有りません。 今問題となるのはムサシノモデルのここ27年間の間に韓国で生産した製品の事です。まず1994年に発売したOゲージの東京都電6000形は経年劣化は全く認められません。2014年発売のEF65からそれまでの黄色のウレタンモルトが製造中止となり濃いグレーのウレタンモルトに変更になりましたが材質は全く同じものです。唯一劣化をしてしまったのが16番のED54でこれは理解に苦しむところです。と云うことでそれ以外の製品のモルトは問題が無いと言って差し支えないと思います。20年を経過して問題ないものはこれから劣化するとは考えにくいからです。また当店ではラッカーのニトロセルローズと相性の悪い塩化ビニールではなく安全なポリエチレンシートと不織布を模型を包むために最初に使用したメーカーです。やはり模型を買った時の思い出を大切にしていただきたとの思いからです。